お正月に帰省したら、なんか様子がおかしい……そんな違和感を感じたことはありませんか?
筆者より
「年のせいかな」と思って見過ごしてしまいがちですが、実は早期発見が本人と家族の生活を守る最大の鍵になります。
この記事は、大学病院の医療相談員として大学病院で相談業務を担い、脳神経内科での勤務経験もある筆者が、子世代の方が気づきやすい認知症の初期症状チェックリスト10選と、受診を嫌がる場合の対処法まで本音で解説します。
この記事でわかること:
①加齢による物忘れと認知症の違い
②子世代が観察できるチェックリスト10選
③受診を嫌がる親への対処法(実体験あり)
④早期発見で何が変わるか
「年のせい」と「認知症のサイン」はここが違う
物忘れは誰にでもありますが、加齢による物忘れと認知症による物忘れには明確な違いがあります。
加齢による物忘れ:
- 夕食のメニューを忘れても、ヒントがあれば思い出せる
- 物忘れを自分で自覚している
- 日常生活に大きな支障はない
認知症による物忘れ:
- 夕食を食べたこと自体を忘れる
- 物忘れを自覚していない(「そんなこと言っていない」と言い張る)
- 同じことを5〜10分以内に繰り返し聞く
💬 脳神経内科経験から
脳神経内科で働いていた経験から言うと、「最近様子がおかしい」と感じた家族の直感は、かなりの確率で正しいです。「気のせいかな」と思っても、一度専門家に相談することをためらわないでください。
子世代が気づきやすい!認知症の初期症状チェックリスト10選
以下は、ケアマネジャーとして多くのご家族から相談を受けてきた経験をもとに、子世代が帰省時や電話で気づきやすいサインをまとめたものです。本人に直接聞くより、日常の様子を観察することが大切です。
①同じことを何度も聞く
- 5〜10分以内に同じ質問を繰り返す
- 「さっき言ったよ」と伝えても「そんなこと聞いていない」と否定する
- 電話で同じ話を何度もする
②通い慣れた道で迷う
- 長年住んでいる近所で迷子になる
- スーパーや病院など、いつも行く場所への道がわからなくなる
- 「どこにいるかわからなくなった」と連絡が来る
③料理の味が変わった・献立が単調になった
- 帰省したら料理の味付けが極端に変わっていた
- 毎日同じメニューが続くようになった
- 料理の手順がわからなくなった(煮物が焦げる、調味料を入れ忘れるなど)
④冷蔵庫に同じものが複数入っている
- 冷蔵庫を開けると牛乳や卵が何個も入っている
- 「買ってきたよ」と同じ日に同じものを何度も買ってくる
- 賞味期限切れのものが大量にある
⚠️ 帰省時は冷蔵庫の中を確認してみてください
同じものが複数入っていたり、賞味期限切れのものが多い場合は、注意が必要なサインです。
⑤お金の管理がおかしくなった
- 通帳の記帳内容がおかしい(同じ店で何度も引き出しているなど)
- 「財布からお金が消える」と言い始めた(実は自分で別の場所になおしている)
- 公共料金の支払い忘れが増えた
⑥怒りっぽくなった・性格が変わった
- もともと温厚だった人が急に怒りっぽくなった
- 些細なことで怒鳴る・暴言が増えた
- 逆に、活発だった人が急に無気力になった
💬 注意が必要なのは、「もともと短気な人がさらに怒りっぽくなった」というケースです。これは認知症のサインであることもありますが、後述するように性格によるものと診断されることもあります。どちらにしても、受診して専門家に確認することが大切です。
⑦趣味や外出への興味がなくなった
- ずっと続けていた趣味をぱったりやめた
- 「外に出たくない」「人に会いたくない」と引きこもるようになった
- テレビも見なくなった、何もしたくないと言う
⑧季節に合わない服を着る
- 真夏に厚着をしている、真冬に薄着でいる
- 同じ服を何日も着続ける
- 身だしなみへの関心がなくなった
⑨薬の飲み忘れが増えた
- 薬が大量に余っている・飲んだかどうかわからなくなる
- 「薬を飲んだ」「飲んでいない」で家族と揉める
- 持病の管理が急に乱れてきた
⑩電化製品の操作がわからなくなった
- テレビのリモコン、電子レンジの使い方がわからなくなった
- 「壊れた」と言うが実は使い方を忘れている
- スマホや固定電話のかけ方がわからなくなった
💡 このチェックリストは、帰省時や電話での会話の中で観察できる項目を中心にまとめています。1つ当てはまるだけで認知症と断定はできませんが、複数当てはまる場合や急に変化が出てきた場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターへの相談をおすすめします。
認知症の種類によって症状が違う(脳神経内科経験から)
一口に認知症といっても、種類によって初期症状が異なります。脳神経内科での勤務経験をもとに、代表的な4種類を解説します。
①アルツハイマー型認知症(全体の約6割)
- 記憶障害からゆっくり進行するのが特徴
- 最初は「新しいことが覚えられない」から始まる
- 時間・場所がわからなくなる見当識障害が出てくる
- ゆっくり進行するため、家族も気づきにくい
②脳血管性認知症
- 脳梗塞や脳出血が原因で起こる
- 手足の麻痺や歩行障害を伴うことがある
- 症状が階段状に悪化するのが特徴(ある日突然悪くなる)
- 高血圧・糖尿病の管理が予防につながる
③レビー小体型認知症
- 「幻視」(実際にはいないものが見える)が特徴的な症状
- 「部屋に知らない人がいる」「虫がいる」などの訴えが出る
- パーキンソン症状(動作が遅くなる・転びやすくなる)を伴うことがある
- アルツハイマー型と間違われやすい
④前頭側頭型認知症
- 記憶障害より先に「性格の変化」「行動の異常」が出やすい
- 万引きや信号無視など、社会的に問題のある行動が出ることがある
- 比較的若い年代(65歳以下)に多い
- 「怒りっぽくなった」「非常識な行動をする」は受診のサイン
💬 脳神経内科の現場では、レビー小体型認知症の「幻視」に家族が気づかないケースが多くありました。「変なことを言う」と流さず、具体的に何が見えるのかを聞いてみてください。
チェックリストに当てはまったら——受診を嫌がる場合の対処法
「受診を勧めると怒って話にならない」——この悩みは、相談窓口でも一番多く聞かれる声です。
筆者より
知人から相談を受けたことがあります。もともと短気なお父さんだったのですが、最近さらに怒りっぽくなって怒鳴ることが増え、物忘れも目立つようになったというのです。「受診しよう」と言うと怒って取り合ってもらえず、家族がどうしたらいいかわからない状態でした。
相談を受けた私が「脳ドックという名目で受診してみては」とアドバイスしました。事前にかかりつけ医にも相談して、必要であれば大学病院へ紹介してもらえるよう段取りも整えておきました。受診当日は、病院では怒ることなくスムーズに診察を受けられたそうです。
結果は「異常なし」——認知症ではなく、もともとの性格によるものという診断でした。家族の関わり方を工夫しながら対症療法で様子を見ることになりましたが、「受診して異常なしとわかった」ことで家族全員がとても安心できたと話してくれました。
💬 このエピソードから学べる大切なことが2つあります。①「認知症かもしれない」と正面から言わず、「脳ドック」や「健康診断」という名目で受診を促す方法が有効なこと。②受診して「異常なし」とわかることで、家族も本人も安心できる。認知症でなかったとしても、受診して損はありません。
受診を嫌がる場合の対処法まとめ:
- 「認知症の検査」ではなく「脳ドック」「健康診断」「物忘れ外来」と伝える
- かかりつけ医に先に相談して、自然な流れで紹介してもらう
- 「私も一緒に検査受けるよ」と誘う
- 受診前に「いつから・どんな症状か」をメモして医師に渡す
- 地域包括支援センターに家族だけで先に相談する(本人抜きでOK)
⚠️ 受診を強引に連れて行こうとすると、かえって関係が悪化することがあります。まずは家族だけで地域包括支援センターやかかりつけ医に相談し、プロのアドバイスをもらいましょう。
早期発見で何が変わるか
「認知症は治らない」と思っている方も多いですが、早期発見には大きなメリットがあります。
①進行を遅らせる薬がある
- アルツハイマー型認知症には、進行を遅らせる薬がある
- 早期であればあるほど、薬の効果が出やすい
- 早く気づいて受診することが、本人のQOL(生活の質)を守ることにつながる
②介護保険の準備が早くできる
- 認知症と診断されたら要介護認定の申請ができる
- デイサービスや訪問介護など、在宅サービスを早めに使い始めることで介護する家族の負担が減る
- 要介護認定の申請方法については別記事で詳しく解説しています
③本人が意思決定できるうちに話し合える
- 認知症が進むと、本人の意思確認が難しくなる
- 「どこで暮らしたいか」「延命治療はどうするか」などを早いうちに話し合えるのが早期発見の最大のメリット
- エンディングノートに残しておくことも大切
💬 ケアマネとして痛感するのは、「もっと早く気づいていれば」という家族の後悔です。本人が自分の言葉で意思を伝えられるうちに、お金のこと・住まいのこと・医療のことを話し合っておいてください。
まとめ
📌 この記事のまとめ
①加齢の物忘れは思い出せるが、認知症の物忘れは出来事自体を忘れる
②冷蔵庫の中・料理の味・お金の管理など、帰省時に観察できるサインが多い
③受診を嫌がる場合は「脳ドック」名目が有効。かかりつけ医に先に相談するのがコツ
④受診して異常なしでも、それはそれで家族の安心につながる
⑤早期発見で進行を遅らせる・本人の意思を確認できる時間が生まれる
「気のせいかな」と思っても、一度専門家に相談することをためらわないでください。早すぎることはありません。
筆者より
このブログでは、大学病院の医療相談員経験をもとに、終活・介護・実家じまいに関する情報を発信しています。介護の準備については親の介護準備完全ガイドもぜひ読んでみてください。

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