認知症中期に備えるグッズと環境整備|徘徊・転倒・火の不始末への向き合い方

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認知症の中期は、「本人がまだ動ける」からこそ、家族が最も振り回されやすい時期です。

徘徊、転倒、火の不始末——こうした困り事に直面したとき、「何か対策をしなければ」と焦る気持ちはよくわかります。でも、「完璧な備えを揃えなければ」と思う必要はありません。ご本人の状況や家族の環境によって、合う方法は違います。できることから少しずつ備えていくことが、長く続く介護の基本です。

大学病院の医療相談員として多くの家族と向き合ってきた経験から、認知症中期の困り事と向き合う選択肢をお伝えします。


目次

認知症中期とはどんな時期か

認知症はおおよそ初期・中期・後期という段階をたどります。初期は「少し物忘れが増えた」と感じる程度で、日常生活はほぼ自立しています。後期になると、自分では動けない場面が増えてきます。

そして中期は、日常生活に支援が必要になり始めるが、本人はまだ自分で動けるという段階です。この「動けるのに、判断力が落ちている」という状態が、家族にとって最も難しい局面をつくります。

  • 同じ話を何度もする、同じものを何度も買ってくる
  • 外に出て迷子になる(徘徊)
  • 料理の途中でコンロをつけたまま忘れる
  • 「財布を盗まれた」と家族を責める(物盗られ妄想)

以前担当したご夫婦のことが今も印象に残っています。奥様が認知症で、コーラスがお好きな方でした。訪問するといつも素敵な声で讃美歌を歌ってくれました。でも同じ物を何度も買ってきたり、紅茶を淹れようとしてお湯だけが出てきたり。本人なりの思いがあっての行動なのですが、ご主人は毎日振り回されていました。

大切なのは、認知症の方の行動には必ず本人なりの理由があるということです。「外に出なければ」「料理しなければ」——それはかつての日常を守ろうとする、本人の切実な気持ちからきています。「困った行動」として捉えるより、「どんな理由があるのだろう」と一歩引いて考えることが、対応のヒントになります。

認知症の初期症状や診断直後のステップについては、認知症 初期症状チェックリスト10選親が認知症と診断されたら、まず何をする?もあわせてご覧ください。


徘徊への備え:選択肢を知っておく

徘徊は認知症中期によく見られる行動です。「家に帰りたい」「仕事に行かなければ」など、本人なりの目的があって外に出ます。全国では認知症による行方不明者が年間約1万8千人にのぼるとされており(警察庁調べ・一般的な目安として)、家族にとって大きな不安のひとつです。

ただ、徘徊への備えに「これが正解」という方法はありません。昔ながらの対策も今も有効ですし、テクノロジーを使う方法も選択肢の一つです。ご本人の状況や家族の環境に合わせて、できることから始めてみてください。

たとえば、服や持ち物に名前と連絡先を縫い付けておくだけで、発見時の対応がスムーズになります。地域の見守りネットワークに登録しておくと、近所の方が気づいて声をかけてくれることもあります。

GPS端末という選択肢もあります。ポケットやカバンに入れておくだけで、家族がスマートフォンから位置を確認できます。ただしGPSが必ず必要というわけではなく、あくまで「こういう方法もある」という選択肢の一つです。

自宅内の様子を確認したい場合は、見守りカメラの設置も検討できます。外出先からスマートフォンで室内を確認できるため、「今どこにいるのか」が把握しやすくなります。

📋 徘徊への備えの選択肢一覧
□ 地域の見守りネットワークへの登録(市区町村・地域包括支援センターに相談)
□ 服・持ち物への名前・連絡先の記載
□ GPS端末の活用(カバンや靴に入れるタイプなど)
□ 見守りカメラの設置(外出時の自宅内確認に)
□ 玄関センサーの設置(外出を検知して通知が届く)
□ 地域包括支援センターへの見守りサービスの相談

ご本人の状況によって合う方法は違います。まず地域包括支援センターかケアマネに相談してみてください。

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見守りカメラの選び方は見守りカメラおすすめ3選、玄関の鍵の管理についてはSwitchBotスマートロック実体験レビューもご参考にどうぞ。


転倒への備え:環境を少しずつ整える

認知症中期になると、判断力やバランス感覚が少しずつ落ちてきます。それに伴い、転倒のリスクが高まります。転倒→骨折→そのまま寝たきりという流れは、認知症の進行を大きく早めることがあるため、環境の整備は早めに検討しておきたいことのひとつです。

ただし、「全部やらなければ」と焦る必要はありません。まず一つ、気になる場所から始めてみてください。

  • 段差の解消——すりつけ板や段差解消マットで、玄関や部屋の入り口の段差をなだらかにする
  • 手すりの設置——廊下・トイレ・浴槽まわりに手すりをつける。市販品でも設置できるが、介護保険の住宅改修給付(上限20万円が目安)を使う方法もある
  • 滑りにくい床環境を作る——滑り止め付きのスリッパや床マットを活用する
  • センサーライトの設置——夜間にトイレへ向かう際の転倒を防ぐため、廊下や階段に人感センサーライトを置く
  • 動線の確保——不要な家具やコードを片付けて、よく通る場所を広く保つ

介護保険の住宅改修給付は、要介護認定を受けている方を対象に、手すりの設置・段差の解消・床材の変更などに最大20万円(一般的な目安)が支給される制度です。ケアマネジャーに相談することで申請をサポートしてもらえます。

転倒リスクが高い場所チェックリスト
□ 廊下(暗い・段差がある・物が置いてある)
□ トイレ(床が滑りやすい・手すりがない)
□ 浴室(濡れた床・浴槽への出入り)
□ 階段(手すりがない・急勾配)
□ 玄関(上がりかまちの段差・滑りやすい床)

気になる場所があれば、一か所ずつ対応を検討してみてください。


火の不始末への備え:過度に心配しすぎなくていい

「コンロをつけたまま忘れる」「鍋を焦がした」——こうした出来事があると、家族は「すぐにガスを止めなければ」と焦ります。でも実際には、認知症があっても「火は危ない」という感覚が残っていることが多く、実際に火事に至るケースは意外と少ないのが現実です。

もちろん進行とともにリスクは高まるため、状況に応じた対応を段階的に検討することは大切です。ただし「すぐに料理をやめさせるべき」「今すぐガスを撤去すべき」という判断は、本人の尊厳や生活意欲に関わることでもあります。本人にとって料理は大切な日課かもしれません。ケアマネジャーと相談しながら、無理のない方法を一緒に考えることをおすすめします。

状況に応じて検討できる選択肢は以下の通りです:

  • センサー付きコンロへの変更——天ぷら火災防止センサーや消し忘れセンサーが付いたガスコンロに切り替える
  • IHクッキングヒーターへの切り替え——火を使わないため安全性が高い。ただし本人が使い慣れるまで時間がかかる場合もある
  • 自動消火機能付き調理器具の活用——タイマーで自動的に止まるタイプのものを検討する
  • 料理の場面に家族や介護者が同席する——見守りながら一緒に調理することで、本人の「料理したい」という気持ちも大切にできる
  • デイサービスや配食サービスの活用——「調理しなくていい」環境を少しずつ整えることで、自然にコンロから離れることができる

💡 ケアマネに相談するタイミングの目安
・コンロの消し忘れが週に複数回起きるようになった
・焦がした・空焚きしたことが一度でもあった
・本人が「料理した記憶がない」と言い始めた
・家族が一人で対応することに限界を感じてきた

「こんなことで相談していいのか」と思わず、気になったらすぐ連絡してください。


グッズより大切なこと:ケアマネと家族で話し合う

グッズや環境整備はあくまで「介護をサポートする手段」です。それ自体が目的になってしまうと、「完璧にやらなければ」という焦りになりやすくなります。

一番大切なのは、ケアマネジャーと定期的に状況を共有し、変化があれば早めに伝えるという習慣です。徘徊が増えた、転倒しそうになった、料理に変化が出てきた——こうしたサインをケアマネと共有することで、次のステップを一緒に考えてもらえます。

先ほどのご夫婦のケースでは、徘徊が増えた時期に地域の見守りサービスへの登録や、服への名前の縫い付けなどで対応していました。今だったらGPSという選択肢もあったかもしれません。ただ、どんな対策も「これで完璧」はなく、ケアマネと状況を共有しながら一つひとつ対応していくことが大切だと実感しています。

遠くに住む家族がどう関わるかについては遠距離介護を成功させる方法、介護疲れを感じているときは認知症の親の介護疲れ|限界サインと家族を守る5つの対策もあわせてご覧ください。


まとめ

認知症中期の備えは、「完璧を目指す」のではなく「できることから一つずつ」が基本です。徘徊・転倒・火の不始末それぞれに選択肢があります。ご本人の状況と家族の環境に合わせて、ケアマネや地域包括支援センターと相談しながら、無理のない範囲で整えていきましょう。

📌 この記事のまとめ
①認知症中期は「まだ動けるが判断力が落ちている」最も振り回されやすい時期
②徘徊への備えは地域ネットワーク・GPS・見守りカメラなど複数の選択肢がある
③転倒リスクの高い場所を確認し、できる場所から環境を整える
④火の不始末は過度に心配しすぎず、状況に応じて段階的に対応する
⑤グッズより大切なのはケアマネと定期的に状況を共有する習慣

認知症のサインが気になる方は認知症 初期症状チェックリスト10選、介護疲れが気になる方は認知症の親の介護疲れ|限界サインと家族を守る5つの対策、介護全体の流れをつかみたい方は親の介護準備完全ガイドもぜひご覧ください。

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