薄々おかしいなと思いながら受診した結果、やっぱり認知症だった——そんな診断を受けたとき、これからどうすればいいのか途方に暮れる方は多いです。
筆者より
認知症は診断されてからの「初動」がとても大切です。でも、慌てる必要はありません。
この記事は、大学病院の医療相談員筆者が、診断直後にやること・お金まわりの注意点・介護サービスの使い方・家族の心構えまで、実務経験をもとに解説します。
親の認知症の初期症状が気になる方は、まず初期症状チェックリスト10選もあわせて読んでみてください。
診断直後にやること【最初の1週間】
認知症と診断された直後は、やるべきことが多くて焦ってしまいがちです。でも、一番大切なのは「まず落ち着いて、正しい情報を集めること」です。
①主治医に現状と今後の見通しを聞く
- 診断後すぐに主治医と面談し、現在の症状の進行具合・今後の見通し・使える薬について確認する
- 聞きたいことをメモして持参する(その場でメモを取りながら聞く)
- 同居が難しい場合はその旨を伝え、サポート体制についてアドバイスをもらう
- わからないことはできるだけその場で全部聞く
②地域包括支援センターに連絡する
- 地域包括支援センターは、介護・医療・福祉の総合相談窓口。無料で相談できる
- 認知症と診断されたことを伝えれば、次のステップを一緒に考えてくれる
- ケアマネジャーの紹介・介護保険の申請サポートもしてくれる
- まずは電話で相談OK。「何を相談したらいいかわからない」という状態でも大丈夫
③要介護認定の申請を始める
- 介護サービスを使うためには、まず要介護認定が必要
- 申請から結果が出るまで約1〜2ヶ月かかるため、早めに動くことが大切
- 詳しい申請の流れは要介護認定の申請方法をわかりやすく解説!で解説しています
④家族で情報共有する
- 認知症の診断を一人で抱え込まず、きょうだいや家族に早めに共有する
- 「誰が中心になるか」「遠方の家族はどう関わるか」を早めに話し合う
- 後から「知らなかった」が一番もめる原因になる
💬 大学病院の相談窓口で感じるのは、「もっと早く気づいていれば、できることがあったかもしれない」という家族の後悔です。診断後すぐに動き出すことで、本人が意思を伝えられる時間と選択肢が格段に広がります。
お金・財産まわりは早めに動く【資産凍結の落とし穴】
認知症の診断後、多くの家族が見落としがちなのがお金・財産まわりの手続きです。放置すると「資産凍結」という思わぬ落とし穴にはまることがあります。
資産凍結とは:
- 認知症が進んで判断能力が低下すると、銀行が本人の口座を凍結することがある
- 凍結されると、家族であっても預金を引き出すことができなくなる
- 介護施設の入居金・医療費・日常の生活費が払えない状況になることも
⚠️ 認知症の診断後に金融機関に連絡すると、その場で口座が凍結されるケースがあります。お金が手元にあるのに使えない状況は、介護費用の支払いにも深刻な影響を及ぼします。まずはケアマネや地域包括支援センターに相談を。必要であれば司法書士・弁護士などの専門家を紹介してもらいましょう。
診断後すぐにやること:
- 通帳・キャッシュカード・印鑑・保険証券・権利証の場所を確認する
- 加入している保険の内容を確認する(認知症保険・介護保険が使えることも)
- 財産の全体像を把握する(不動産・預貯金・株など)
💡 成年後見制度・家族信託という選択肢もあります。どちらも判断能力があるうちに動き出すのが鉄則です。ケアマネや地域包括支援センターに相談すると、必要に応じて専門家につないでもらえます。
介護サービスを早めに使い始める
「まだそこまでじゃない」と思っているうちに介護サービスを使い始めることが、実はとても大切です。
早めに使い始めるべき理由
認知症が進行する途中で「物取られ妄想」が出ることがあります。「財布を盗まれた」「通帳がなくなった」と家族や介護者を疑う症状です。見知らぬ介護者が突然来ると、この妄想が起きやすくなります。
早い段階から少しずつデイサービスや訪問介護を使い、信頼関係を築いておくことで、症状が進んでからもスムーズにサービスを継続できます。
💬 ケアマネとして実感するのは、介護サービスは「限界になってから使う」より「余裕があるうちから使い慣れる」ほうが、本人も家族もずっと楽だということ。特に認知症の場合、症状が進行してから新しい人間関係を構築するのは難しくなります。介護予防サービスも含めて、早めに少しずつ使い始めることを強くおすすめします。
使えるサービスの例
- デイサービス(日中に施設へ通い、食事・入浴・リハビリなど)
- 訪問介護(ヘルパーが自宅を訪問して生活サポート)
- 訪問看護(看護師が自宅を訪問して医療的ケア)
- ショートステイ(短期間施設に泊まる。家族のレスパイトにも)
- 認知症カフェ(本人・家族が集まる地域の居場所)
認知症の親との接し方【家族の心構え】
「さっきも言ったでしょ」——この一言が、認知症の親を深く傷つけていることがあります。
筆者より
①否定しない・訂正しない
- 「さっきも言った」「それは違う」という否定は逆効果
- 本人は本当に覚えていないので、責めても意味がない
- 同じ話を何度聞いても、「そうだね」と受け止めることが大切
- 感情は残る。怒られた記憶は忘れても、「怖い」「悲しい」という感情は残りやすい
②怒りっぽい・暴言があるときの対応
- 怒りや暴言は「病気の症状」。本人がそうしたいわけではない
- 反論せず、その場をいったん離れるのが有効
- 怒りの引き金になりやすいもの(急かす・大勢の人・慣れない環境)を避ける
- 「なぜそうなるのか」を理解することで、家族のストレスも軽減される
③家族だけで抱え込まない
家族だけで解決しようとすると、介護する側が息詰まってしまいます。介護サービスなどの第三者を上手に取り入れることで、本人も家族も孤立しません。「助けを求めることは負けじゃない」という意識が大切です。介護する家族が元気でいることが、一番の親孝行です。
💬 相談窓口で何度も聞いた言葉があります。「親の介護で自分の人生をすり減らしてはいけない」。介護は長期戦です。家族が孤立せず、地域や介護サービスとつながりながら、無理なく続けていける体制を作ることが最も大切です。
家族で役割分担する・一人で抱え込まない
認知症の介護で一番多いトラブルが、きょうだい間の負担の偏りです。近くにいる人が損をしないよう、早めに役割分担を決めておきましょう。
遠距離のきょうだいとの役割分担
- 近くにいる人:日常的なサポート・緊急時の対応
- 遠くにいる人:金銭的なサポート・帰省時のまとまった対応・情報収集
- 「近くにいるから損」にならないよう、役割を言語化して共有する
- ケアマネを交えた家族会議も有効
使える制度を知っておく
- 介護休業:通算93日まで、3回に分けて取得可能(会社による)
- 介護休暇:年5日(会社による)
- 介護のために仕事を辞める「介護離職」は避けたほうがいい。まず制度を知り利用することの検討を
💡 介護離職をする前に、まずはケアマネや地域包括支援センターに相談を。使える制度やサービスを組み合わせることで、仕事を続けながら介護できるケースは多くあります。
まとめ
📌 この記事のまとめ
①診断後すぐに主治医・地域包括支援センター・家族と情報共有する
②お金・財産まわりは資産凍結のリスクがあるため早めに動く。まずケアマネに相談を
③介護サービスは限界になる前から使い始め、信頼関係を早めに構築する
④否定せず、家族だけで抱え込まず、第三者をうまく取り入れる
⑤きょうだいで役割分担し、介護する家族が孤立しない体制を作る
認知症は終わりじゃない。準備と周囲のサポート次第で、本人も家族も穏やかに過ごせる時間は必ず作れます。
筆者より
このブログでは、大学病院の医療相談員経験をもとに、終活・介護・実家じまいに関する情報を発信しています。介護の準備については親の介護準備完全ガイドもぜひ読んでみてください。

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