おひとりさま・独身の終活マップ|倒れる前から死後の手続きまで、備える順番がわかる

おひとりさまの終活は、何から手をつければいいのか分かりにくいものです。調べるほど、保証人、後見、死後事務と、難しい言葉ばかりが増えていく。そう感じている方は多いと思います。

実は、備えには順番があります。今すぐ全部をそろえる必要はなく、今の自分がどの段階にいるかが分かれば、次にやることは自然と絞られてきます。この記事では、大学病院の医療相談員として現場で見てきたことをもとに、倒れる前から死後の手続きまでの流れを、ひとつの地図として整理しました。

目次

備えには順番がある——全体マップ

「終活」とひとことで言っても、実際にやることは段階によってまったく違います。今すぐ必要なこともあれば、何年も先の話もあります。ここでは、大きく5つの段階に分けて整理してみました。

段階 いつのことか 困りやすいこと 元気なうちにできること
①倒れる前 誰にも気づかれない 緊急連絡先・鍵・情報の置き場所を決める
②入院したら ある日突然 保証人、着替え、お金 入院セットと相談窓口を知っておく
③退院したあと 入院の終わりに お金を使うことへのためらい、誰に頼むか お金の使いどきと頼り方を決めておく
④介護が必要になったら 数年先 手配を誰がするのか 地域包括支援センターとつながる
⑤死後の手続き そのあと 手続きをする人がいない 任意後見・死後事務・エンディングノート

全部を今やる必要はありません。①だけで、不安の大半は軽くなると思います。同じように感じている方に、現場でも数多くお会いしてきました。

大切なのは、今の自分がどのあたりにいるかを知ることです。まだ何も起きていない今だからこそ、落ち着いて考えられることがあります。慌てて全部の段階に手を伸ばすより、ひとつずつ順番に向き合うほうが、結果的には遠回りにならないと私は思います。このあと、それぞれの段階についてもう少し詳しくお伝えしていきます。

段階① 倒れる前の備え

一人暮らしをしていると、「もし今倒れたら、誰か気づいてくれるだろうか」という不安が、ふと頭をよぎることがあります。この不安の正体と備え方は、一人暮らしで倒れたら、誰が気づく?で詳しく書きました。人とのつながり、機械の見守り、駆けつけサービスという3つの層で備えておくと、どれか1つがうまく働かなくても、他が補ってくれます。

倒れる前の備えとして、もうひとつ大切なのが「情報の置き場所」です。緊急連絡先、かかりつけ医、服薬情報、通帳や保険証の場所。こうした情報は、いざというとき自分では伝えられないことがあります。何をどこまで書けばいいか迷う方も多いのですが、最初から完璧を目指さなくて大丈夫です。エンディングノートの書き方を参考に、まずは分かる範囲で書き出しておくだけでも、家族や支援してくれる人の助けになります。

玄関の鍵も、見落とされがちな備えのひとつです。気づいてもらえても、鍵が開かず入れないと、その分時間がかかってしまいます。私自身の実体験はSwitchBotスマートロックを使ってみた実体験レビューにまとめています。

ここで挙げた備えは、どれも今日から少しずつ整えられるものです。難しく考えず、まずひとつだけ試してみるくらいの気持ちで十分だと思います。

段階② 入院したら

どんなに備えていても、実際に入院することになると、次々と気になることが出てきます。「保証人はどうすればいいのか」「入院中の着替えや洗濯は誰がするのか」「お金は足りるのか」。おひとりさまの場合、頼れる家族がすぐそばにいない分、不安の種類も少し違います。

結論からいうと、保証人がいないことだけを理由に入院を断られることはありません。実際の手続きの流れや、身の回りのことをどう回すかについては、独身・おひとりさまの入院、誰に頼む?で詳しく解説しています。

「誰に相談していいか分からない」というときは、病院の中にも相談できる場所があります。医療相談室・医療相談員(MSW)が何をしてくれるのかは医療相談室・MSWって何をしてくれる?にまとめました。ひとりで抱え込まなくて大丈夫です。

入院という状況になると、気持ちの余裕がなくなりがちです。分からないことをその場で聞いてしまっても、迷惑になることはありません。

段階③ 退院したあと

退院が決まったときに、実はいちばんつまずきやすいのがこの段階です。ここは、私が現場で見てきたことをもとに、少し詳しく書いておきたいと思います。

ひとつは、「老後のためのお金」が、今のために使えないという状況です。貯えは十分にあるのに、「これは老後のために取ってあるお金だから」と、介護サービスや自費のサポートを使うことをためらう方に、現場でしばしばお会いします。お気持ちはよく分かります。でも、そのお金をいつ・何のために使うかを、元気なうちに自分の中で決めておくことも、備えのひとつだと私は思います。

もうひとつは、協力の申し出を受け取れない、という状況です。長く疎遠だった家族でも、いざというときに「できることはします」と声をかけてくれることは、実際に少なくありません。それでも、長くひとりでやってきた方ほど、その申し出をそのまま受け取る練習をしてこなかったのだと思います。断ってしまうのは、意地からではなく、慣れていないからだというのが私の実感です。頼ることは負けではないと、私は思っています。

このふたつに共通しているのは、備えというと「増やすこと」「申請しておくこと」のようなイメージが先に立ちますが、実際にはそれだけではないということです。すでに持っているものを、いつどう使うか、誰の手を借りるかを決めておくこと自体が、備えの中身になります。

退院のときに困るのは、体のことよりも「誰に・何を・どこまで頼むか」を決めていなかったことのほうが多い、というのが現場での実感です。

段階④ 介護が必要になったら

入院・退院を経て、体力が戻らないまま、介護が必要になる段階に進むこともあります。多くの場合、ここでは、誰が手配をするのかということが最初の壁になります。

おひとりさまの場合、家族が窓口になって調整するという前提そのものが成り立たないことがあります。そのときに頼れるのが、地域包括支援センターです。市区町村ごとに設置されている高齢者の総合相談窓口で、まだ介護保険を使っていない段階でも、相談することができます。

実際にこの段階に進むかどうかも、人によって違います。今の元気なうちに知っておいてほしいのは、「何もかも自分ひとりで背負わなくていい」という、その一点です。

今すぐこの段階について詳しく調べる必要はありません。いざというときに「相談できる場所がある」と知っておくだけで、気持ちの負担はだいぶ違うと思います。

介護が実際に始まるときに何が起きるのかは、一人暮らしで介護が必要になったときの手続きと段取りに詳しくまとめています。

段階⑤ 死後の手続き

最後の段階が、死後の手続きです。手続きそのものは行政や専門家に依頼できますが、「誰が手続きをしてくれるのか」を決めていないと、頼れる家族がいない場合、手続きを進める人がいないという事態になりかねません。

判断能力が衰えたときに備える方法として、任意後見という制度があります。元気なうちに、信頼できる人と将来の後見人になってもらう契約を結んでおく仕組みで、詳しくは成年後見・任意後見についてで解説しています。

死後の手続きを誰かに委任しておく「死後事務委任」という方法もあります。ここでは深く立ち入りませんが、契約する相手や範囲を決めておく仕組みだと知っておくだけでも十分です。

任意後見も死後事務委任も、名前を聞くと身構えてしまうかもしれません。ただ、どちらも「元気なうちに、自分の意思で決めておける」という点は共通しています。誰かに決められるのではなく、自分で選んでおけることが、この段階の備えの本質だと私は思います。

まずは、エンディングノートに、希望や大事な情報を書き出しておくことから始めてみてください。

まとめ——今日できるのはひとつだけでいい

ここまで、倒れる前から死後の手続きまで、5つの段階を見てきました。全部を一度に整える必要はありません。むしろ、一度に全部やろうとすると、かえって手が止まってしまうと思います。

今日できることを、ひとつだけ挙げるとしたら、「緊急連絡先を1人決めておく」ことです。友人でも、遠い親戚でも構いません。まずはそこから始めてみてください。

この記事で紹介した各段階について、もう少し詳しく知りたいときは、それぞれのリンク先の記事もあわせて読んでみてください。

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この記事を書いた人

大学病院の医療相談員です。看護師・社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーとして、入院から退院、その先の暮らしまでのご相談を20年以上お受けしてきました。制度は、知らないと使えないものがたくさんあります。難しいことを、どこよりも身近に。

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